気分はもう決戦

自分の解釈を放流するブログ

浦和v名古屋 J1 20節 2020/10/4

初めに

浦和はこの試合が5連戦目。20日(日)川崎戦0-3、23日(水)清水戦2-1、26日(土)横浜FC戦0-2、30日(水)東京戦0-1となっており1勝3敗で中3日の試合となる。

名古屋もこの試合が5連戦目。19日(土)神戸戦2-1、23日(水)ガンバ戦1-2、26日(土)清水戦3-1、30日(水)神戸戦0-1となっており2勝2敗で中3日の試合となる。

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両チームメンバー

浦和は前節から先発は四人変更、柴戸がベンチ外で代わりに伊藤がベンチ入り。

名古屋は前節から先発は宮原、阿部→相馬、オジェソクに変更、宮原がベンチ外で成瀬がベンチ入り。

前半の代表的な事象

給水タイムまで

1:25~西川から健勇へロングフィード、健勇→宇賀神→関根と渡り関根が興梠にパスしようとするが稲垣にカットされる。そして近くにいた関根と健勇がカウンタープレスを仕掛けるも稲垣にターンされ前田→相馬と逆サイドに展開されクロスまで持ち込まれる。

2:45~名古屋のビルドアップに対し中盤以降の6人がプレスをかけ奪いに行くが、金崎がライン間から降りて楔を受け名古屋左サイドに展開。相馬がタッチライン付近でボールを持ち橋岡と正対、周辺ではデン、マルティノスがカバーに入り空間を圧縮。相馬はデンと槙野の間が空いているのを利用した金崎にパス。深い位置でボールを持った金崎は浦和のPAに築いたブロックの外の米本へパス。デンとマルティノスが食いつき前田がフリーとなり米本は前田へパス。前田と西川のエリア内での一対一となった。

4:00~名古屋のビルドアップに対し6人でプレス。金崎が下りてボールを受けようとするがデンが付いてゆき、簡単に繋がせず回収することに成功。

4:20~浦和のビルドアップ。エヴェルトン、関根、宇賀神が狭い場所で何度かパス交換を行い名古屋のMF以降を集め空いた空間からエヴェルトンが前進し、マルティノスへのロングパス。吉田がパスカットした。

7:00~名古屋のコーナーキックショートコーナーからマテウスが浦和のゾーンの外側にクロス。金崎がフリーで合わせる。

7:40~浦和のスローインから。名古屋がプレスをかけ回収。タッチライン付近に流れてきた金崎を経由して稲垣がクロスする。

8:10~西川のパントキックマテウスの後ろのスペースにいた関根に渡る。関根が名古屋ゴール方向を向いたため、稲垣と米本はラインを下げる。このことにより長澤がフリーとなり関根からパスを受ける。長澤は右サイドのマルティノスへパス。マルティノスはPAの角までボールを運び1対2の状況を作り、カットインしてクロス。

8:30~ランゲラクのスローを吉田が受け相馬にパス、デン、マルティノス、長澤、橋岡が空間を狭め相馬から回収する。

8:55~浦和のビルドアップ。MFラインの前でエヴェルトン→橋岡とつなぎ、橋岡に対し相馬が食いついてきたところでマルティノスへ、吉田との一対一を制しPA中央からクロス。興梠の決定機となる。

10:15~名古屋のビルドアップに対し、高いブロックでボールをサイドに誘導し、コントロールに手間取ったジェソクから関根がボール奪取

10:35~浦和のビルドアップから。デンがボールを持ち右サイドを向く。マルティノスがハーフレーンに立ち米本と相馬を引き付け大外の橋岡へ。空間がある橋岡はDF-MFライン間にボールを流し込み興梠へ。そこから関根へ渡りジェソクとの一対一にその後宇賀神のオーバーラップを使いクロスに。

12:15~浦和のビルドアップから。槙野、宇賀神、エヴェルトンのパス交換で前田、マテウス、稲垣が食いついてきたところをエヴェルトンがオリエンタードで稲垣を外しDFラインを晒すことに成功。降りてきた健勇がボールロスト。

18:00~浦和のボールロストから。関根がハーフレーンで前を向いてボールを持ち長澤とパス交換するも米本にカットされる。その後ジェソク→前田にボールが渡るが、宇賀神、エヴェルトンが前田のパスコースを消しサイドへ誘導、関根が前田からボール奪取したがファウルとなる。 

20:00~浦和のビルドアップから、デンから降りてきた健勇→長澤へとつなぎMFラインに対し前向きでボールを持つことに成功。そのまま運び米本、相馬を引き付け橋岡へ渡す。橋岡は相馬と一対一になり縦に突破してクロスへ。

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前半給水タイムまでの名古屋の攻撃のパターン

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浦和の攻撃パターン

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浦和の守備対応


ハーフタイムまで

25:00~浦和のビルドアップから。長澤が2トップの間でゴール方向を向く。長澤に対してだれも制限をかけに来ないので長澤は裏へ抜け出そうとする興梠へロングボール→マルティノスへの折り返し。ほぼ決定機だった。

26:50~浦和のスローインから。健勇が受けマルティノスへパス。マルティノスが吉田を剥がしクロスするがクリア。

28:20~浦和のビルドアップから。デンが制限がかかってないので中央をドライブしライン間の健勇へ楔を通す。健勇がフリックで関根に渡すがロスト。

29:50~浦和のビルドアップから。一旦MFラインまで下りてきた興梠と健勇に預け宇賀神へ落とす。宇賀神にマテウスが引き付けられ関根がジェソクと一対一の状況に。関根がドリブルを仕掛けるがファウルで止められる。

32:20~名古屋の攻撃。吉田が大外でボールを持ち、相馬がハーフレーンに立つ。そして吉田から相馬にボールが渡り抜け出したところをマルティノスがファウル。

36:50~名古屋のビルドアップにプレスをかけ、パスをずらすことに成功。マルティノスが逆サイドまでプレスをかけロングボールの精度を落とす。ロングボールを宇賀神がカットし健勇→関根→マルティノスとつなぎPAでクロス。CKに。

39:25~相馬が大外でボールを持ちカットインしながらPA付近までドリブル。これにより中央に浦和の選手が引き付けられる、その後ブロックの外に浮いた金崎にボールが渡りミドルシュート

41:15~名古屋の左サイドの攻撃に丸山が関与しアーリークロスを上げる。そのこぼれを関根→健勇→興梠と中央でつなぎ名古屋の選手を中央に引き付ける。そして興梠がプレスを回避し浮いていたマルティノスにスルーパス。PK未遂になる。

42:50~デンがロングボールを前線に放つ。丸山がクリアをミスし健勇が回収、興梠→関根とつなぎ関根がカットインからシュート。

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名古屋の攻撃の変化

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名古屋の守備での変化
後半の事象

給水タイムまで

48:40~名古屋のスローインから。右サイドのコーナーフラッグまで前進し、マテウスが利き足の左で金崎にクロス。デンが辛うじてクリア。

52:20~浦和のビルドアップから。興梠が2トップの脇まで下りてきて入れ替わっていた長澤→興梠→健勇と斜めのパスと落としで名古屋のラインを越えていく。

53:20~名古屋の攻撃。左サイドの大外で吉田がボールを持ちハーフレーンに相馬、前田が立つ。さらに周辺に稲垣、マテウスが寄ってきて数的優位を取りながら攻めていく。この流れから金崎の得点となる。

58分関根→柏木、健勇→レオナルド

60:50~浦和のスローインから。柏木が受け興梠にはたく、その後柏木は右ハーフスペースへとフリーラン。

61:25~浦和の攻撃。右の大外でボールを受けた橋岡がMFラインの前でフリーになっている柏木にパス、柏木からレオナルド→橋岡へとつながり橋岡がシュート。

63分長澤→伊藤

64:20~柏木と興梠が短いパス交換を何度か行いマルティノスへ縦パス。ジェソクが突っつきロスト。宇賀神が柏木らに近づき大外に張らなかったためジェソクがマルティノスへそのまま付くことが出来た。

65:40~浦和のビルドアップから。柏木が稲垣を引き連れボールを持っている宇賀神に近づく、それによりDFMFライン間が間延びし宇賀神からライン間の興梠へと入り大外の橋岡まで展開。橋岡がクロスする。

66:30~名古屋のカウンター。マルティノスからボールを奪ったマテウスは稲垣→吉田相馬へとつなぎ橋岡と一対一の状況に。稲垣は金崎に縦に付けることもできたが外側の吉田を選択。

 

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失点シーン

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柏木投入の変化

試合終了まで

69分前田→シャビエル

70:30~槙野が2回前方のスペースにドライブする。2回ともシャビエルにファウルでつぶされる。マルティノスが悶絶し、レオナルドは呆れた顔をする。

71:50~デンからレオナルドに楔が入りマルティノス→伊藤とつながりDFラインと対峙する状況に

73:00~浦和のビルドアップから。宇賀神から伊藤に渡るが、伊藤は稲垣を引き連れさらに後方の確認をしていなかったためジェソクが狙いに来る。結果ジェソクに詰められロスト。

73:30~デンから2トップの裏に位置していた柏木に。柏木はゴール方向を向き裏を狙った橋岡へのパス。

74:55~浦和のビルドアップから。槙野が前方に広大なスペースがある中マークされている宇賀神へのパス。折り返された後も広大なスペースがあったがエヴェルトンへ横パス。

81分宇賀神、マルティノス→山中、武藤

83:25~浦和のプレッシング。米本と稲垣をMF以降の6人で囲みパスミスを誘発柏木→レオナルド→武藤へつながりシュート。CKに。

84分山中のCKのこぼれをシャビエルが運びデンがファウルで止める。DOGSOにより退場の判定。

87:45~西川のロングフィードのこぼれを柏木が回収→興梠→レオナルドとつなぎペナルティアーク付近で前を向くがパスコース、シュートコースが無くサイドに流れる。その後伊藤→柏木→興梠と狭いところを通しエリア付近に近づくが、突っつかれロストこぼれを槙野がミドルシュート

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終盤の浦和の攻撃
浦和の狙いと実行に関しての推察

〇ビルドアップの場面

この試合多く見受けられたのは、ビルドアップの結果として名古屋の2トップの間、裏、脇でゴール方向を向いて選手がボールを受けられたことである。これにより名古屋のMF、DFは危険な中央を締める、ラインを下げるという行動につながった。そのため大外で待機していた選手、マルティノス、関根、橋岡などが一対一の状況でボールを持つことが多くなった。大外の選手がゴールに向いた状態で一対一の状況を作り出すのがこの試合のビルドアップの狙いといえる。

この狙いによって右サイドではマルティノスが対面の吉田に対し何度も突破する場面が見受けられ、そこからクロスが上がり前半の興梠の決定機につながった。逆サイドの関根はオジェソクに何度もつかまり突破するシーンは見られず、前半終盤のカットインからのシュートくらいであった。

また2トップの裏で受けた長澤から興梠へのラインブレイク、あるいはエヴェルトンのオリエンタードからのMFラインの突破、柏木からレオナルド、橋岡にDFラインの際へのパスも見られた。

課題としては、シュートを打つ人間に対しては、チームとして空間と時間を創出する場面はほとんど見受けられなかった。大槻さんが最後の部分の改善をしなければいけないとコメントしているのは、シュートを打つ場面のデザインが未着手だからだといえる。

〇奪取と守備について

この試合の序盤には浦和の選手がボールを失ったのち、素早く奪取に向かう場面がみられた。しかし稲垣にターンされて交わされる、素早く金崎に入れてサイドへ展開されるなどによって効果的には(=奪ってカウンターの効果のある位置で)奪うことはできなかった。この奪取の失敗が何度か続いた後は、ボールロスト後はゾーンによる守備ブロックの形成を優先するようになった。

名古屋の攻撃がロストした際にリスクのある中央付近を避け大外で相馬やマテウスの一対一を作るのに注力していた影響もあるが、ブロック形成後中央を経由させることはほとんどなく、サイドへ誘導しSB-SHが連携して空間圧縮で何度もボールを回収することに成功していた。

一方で課題としていえるのは、名古屋がPA付近に近づくにつれ、空間と人への意識が選手によって曖昧になっていくことといえる。前半の前田のチャンス、金崎のミドルシュート、失点シーンは選手によって空間と人への優先順位が違うようで連動して守備が行えているとはいえなかった。特に失点シーンではボールウォッチャーになり周囲の情報の更新を怠って狭い空間で前田に引き寄せられ、金崎と金崎が利用した空間に対して守備が行えなかった。

〇カウンターについて

この試合では、カウンターといえるのはマルティノスのPK未遂の場面とマルティノスの逆サイドまでのプレッシングからの場面くらいであった。前述したように名古屋の攻撃自体がロストしてカウンターのリスクのある中央からではなかったこと、前線からのプレスで効果的な位置での奪取ができなかったことがほとんどカウンターが行えなかった要因といえる。

未だにセットオフェンスでシュートをどう打つのかというデザインがされてない以上、効果的な位置での奪取からカウンターによる攻撃が現状の浦和の基本的な得点方法といえる。なのでプレッシングの失敗が目立ち意図的な奪取からカウンターの回数が少なかったのは課題であり、この試合で得点が取れなかった要因ともいえる。

〇交代策について

この試合では59分に健勇、関根→柏木、レオ、63分に長澤→伊藤、81分にマルティノス、宇賀神→武藤、山中へと交代していった。

まず、伊藤の交代までで大きく変化したのは後方でのビルドアップにマーカーを引き連れたまま柏木や伊藤が下りてくることである。またボールをさばいた後、前方のスペースへ入り込んでいくフリーランニングである。フリーランニングにはほとんどの場面でマークする選手も付いていた。その結果として柏木からボールを渡された選手の前方のスペースは走ってくる柏木と共に狭まっていくことになった。もちろん柏木や伊藤は狭いエリアでもボールを扱えるので問題はあまりないといえるかもしれない。

交代するまでは大外に空間と時間を作ることを目的としていたビルドアップが、交代してからは中央で空間と時間を見つけ利用するビルドアップに変化していったといえる。当然得点をするならばどちらの方法論でも問題はない。しかし、結局のところどちらの方法でもシュートを打つ選手に時間と空間が現れることはなかった。

レオナルドに関しては積極的にDF-MFライン間で楔を要求して受け、落としたり前方を向くことが出来ていた。しかしレオナルドがシュートを打てる位置でボールを受けた場面はほとんどなかった。

武藤に関してはより中央での空間と時間を見つけるために投入されたように感じる。ペナルティアーク付近でシュートを打てそうだった場面もあった。

〇 選手個人についての感想

マルティノス

この試合が今シーズン初先発だった。これまでの試合では交代出場なのに先発の選手よりも試合途中で疲れ、守備へ走らなくなるなどのネガティブな印象だった。しかしこの試合では、ネイマール並みの痛がり方をするのは置いておいて素早く守備ブロックの形成に尽力する姿、ゴール方向を向きながら時間と空間を創出するドリブル、吉田を圧倒する突破など非常に良いプレーをしていた。さらにプレーだけではなく、試合後にサポーターへの挨拶をする際にも丁寧にサポーターの顔を見ながら拍手したり、深々と礼をしたりしていた。この試合では『浦和の責任』を一番表現していたと思う。継続的にパフォーマンスを見せてほしい。

橋岡

この試合では名古屋の多くの攻撃が相馬と橋岡の一対一に偏っていたので、多くの守備対応が見られた。気になったのがドリブルに対して構える際に、腰を下げすぎた状態でいることが多い点である。スプリントに自信があるためなのかわからないが、腰を下げることで方向転換に時間がかかるので大事な局面で後手を踏むことになる。失点シーンでは腰を下げすぎていたため対応に時間がかかってしまった。攻撃の場面ではマルティノスと効果的にレーンを入れ替わってうまく前進し、ライン間にボールを流し込むなどいい場面はあった。クロスがどんどんうまくなっているので今後は対面を剥がすことが増えてほしい。

あとがき

結果は0-1の負けとなった。要因としては守備の最終局面の連動性がまだないことによる失点、プレッシングの質の低さ、セットオフェンスでのシュートまでの仕組みの未整備による得点の偶発性がいえる。

中身に関しては着実に意図的にできることは増えていると感じるので、サポーターとフロントが大槻さんに対して時間をどのくらい与えたいのかという点が今後重要になる。個人的にはこの試合の内容を発展させていけばミシャが浦和でやりたかったことをよりクラブ全体で再現性をもって行えるようになるのではと思う。

次の試合まで一週間あるので鳥栖戦ではプレッシングの質の改善を期待したい。

 

 

読者の方、お読みいただきありがとうございました。

ご意見があれば、教えていただけると幸いです。