気分はもう決戦

自分の解釈を放流するブログ

浦和v名古屋 J1 20節 2020/10/4

初めに

浦和はこの試合が5連戦目。20日(日)川崎戦0-3、23日(水)清水戦2-1、26日(土)横浜FC戦0-2、30日(水)東京戦0-1となっており1勝3敗で中3日の試合となる。

名古屋もこの試合が5連戦目。19日(土)神戸戦2-1、23日(水)ガンバ戦1-2、26日(土)清水戦3-1、30日(水)神戸戦0-1となっており2勝2敗で中3日の試合となる。

f:id:johnny2230:20201005134141p:plain

両チームメンバー

浦和は前節から先発は四人変更、柴戸がベンチ外で代わりに伊藤がベンチ入り。

名古屋は前節から先発は宮原、阿部→相馬、オジェソクに変更、宮原がベンチ外で成瀬がベンチ入り。

前半の代表的な事象

給水タイムまで

1:25~西川から健勇へロングフィード、健勇→宇賀神→関根と渡り関根が興梠にパスしようとするが稲垣にカットされる。そして近くにいた関根と健勇がカウンタープレスを仕掛けるも稲垣にターンされ前田→相馬と逆サイドに展開されクロスまで持ち込まれる。

2:45~名古屋のビルドアップに対し中盤以降の6人がプレスをかけ奪いに行くが、金崎がライン間から降りて楔を受け名古屋左サイドに展開。相馬がタッチライン付近でボールを持ち橋岡と正対、周辺ではデン、マルティノスがカバーに入り空間を圧縮。相馬はデンと槙野の間が空いているのを利用した金崎にパス。深い位置でボールを持った金崎は浦和のPAに築いたブロックの外の米本へパス。デンとマルティノスが食いつき前田がフリーとなり米本は前田へパス。前田と西川のエリア内での一対一となった。

4:00~名古屋のビルドアップに対し6人でプレス。金崎が下りてボールを受けようとするがデンが付いてゆき、簡単に繋がせず回収することに成功。

4:20~浦和のビルドアップ。エヴェルトン、関根、宇賀神が狭い場所で何度かパス交換を行い名古屋のMF以降を集め空いた空間からエヴェルトンが前進し、マルティノスへのロングパス。吉田がパスカットした。

7:00~名古屋のコーナーキックショートコーナーからマテウスが浦和のゾーンの外側にクロス。金崎がフリーで合わせる。

7:40~浦和のスローインから。名古屋がプレスをかけ回収。タッチライン付近に流れてきた金崎を経由して稲垣がクロスする。

8:10~西川のパントキックマテウスの後ろのスペースにいた関根に渡る。関根が名古屋ゴール方向を向いたため、稲垣と米本はラインを下げる。このことにより長澤がフリーとなり関根からパスを受ける。長澤は右サイドのマルティノスへパス。マルティノスはPAの角までボールを運び1対2の状況を作り、カットインしてクロス。

8:30~ランゲラクのスローを吉田が受け相馬にパス、デン、マルティノス、長澤、橋岡が空間を狭め相馬から回収する。

8:55~浦和のビルドアップ。MFラインの前でエヴェルトン→橋岡とつなぎ、橋岡に対し相馬が食いついてきたところでマルティノスへ、吉田との一対一を制しPA中央からクロス。興梠の決定機となる。

10:15~名古屋のビルドアップに対し、高いブロックでボールをサイドに誘導し、コントロールに手間取ったジェソクから関根がボール奪取

10:35~浦和のビルドアップから。デンがボールを持ち右サイドを向く。マルティノスがハーフレーンに立ち米本と相馬を引き付け大外の橋岡へ。空間がある橋岡はDF-MFライン間にボールを流し込み興梠へ。そこから関根へ渡りジェソクとの一対一にその後宇賀神のオーバーラップを使いクロスに。

12:15~浦和のビルドアップから。槙野、宇賀神、エヴェルトンのパス交換で前田、マテウス、稲垣が食いついてきたところをエヴェルトンがオリエンタードで稲垣を外しDFラインを晒すことに成功。降りてきた健勇がボールロスト。

18:00~浦和のボールロストから。関根がハーフレーンで前を向いてボールを持ち長澤とパス交換するも米本にカットされる。その後ジェソク→前田にボールが渡るが、宇賀神、エヴェルトンが前田のパスコースを消しサイドへ誘導、関根が前田からボール奪取したがファウルとなる。 

20:00~浦和のビルドアップから、デンから降りてきた健勇→長澤へとつなぎMFラインに対し前向きでボールを持つことに成功。そのまま運び米本、相馬を引き付け橋岡へ渡す。橋岡は相馬と一対一になり縦に突破してクロスへ。

f:id:johnny2230:20201005164349p:plain

f:id:johnny2230:20201005164354p:plain

前半給水タイムまでの名古屋の攻撃のパターン

f:id:johnny2230:20201005172620p:plain

f:id:johnny2230:20201005172635p:plain

浦和の攻撃パターン

f:id:johnny2230:20201005173450p:plain

浦和の守備対応


ハーフタイムまで

25:00~浦和のビルドアップから。長澤が2トップの間でゴール方向を向く。長澤に対してだれも制限をかけに来ないので長澤は裏へ抜け出そうとする興梠へロングボール→マルティノスへの折り返し。ほぼ決定機だった。

26:50~浦和のスローインから。健勇が受けマルティノスへパス。マルティノスが吉田を剥がしクロスするがクリア。

28:20~浦和のビルドアップから。デンが制限がかかってないので中央をドライブしライン間の健勇へ楔を通す。健勇がフリックで関根に渡すがロスト。

29:50~浦和のビルドアップから。一旦MFラインまで下りてきた興梠と健勇に預け宇賀神へ落とす。宇賀神にマテウスが引き付けられ関根がジェソクと一対一の状況に。関根がドリブルを仕掛けるがファウルで止められる。

32:20~名古屋の攻撃。吉田が大外でボールを持ち、相馬がハーフレーンに立つ。そして吉田から相馬にボールが渡り抜け出したところをマルティノスがファウル。

36:50~名古屋のビルドアップにプレスをかけ、パスをずらすことに成功。マルティノスが逆サイドまでプレスをかけロングボールの精度を落とす。ロングボールを宇賀神がカットし健勇→関根→マルティノスとつなぎPAでクロス。CKに。

39:25~相馬が大外でボールを持ちカットインしながらPA付近までドリブル。これにより中央に浦和の選手が引き付けられる、その後ブロックの外に浮いた金崎にボールが渡りミドルシュート

41:15~名古屋の左サイドの攻撃に丸山が関与しアーリークロスを上げる。そのこぼれを関根→健勇→興梠と中央でつなぎ名古屋の選手を中央に引き付ける。そして興梠がプレスを回避し浮いていたマルティノスにスルーパス。PK未遂になる。

42:50~デンがロングボールを前線に放つ。丸山がクリアをミスし健勇が回収、興梠→関根とつなぎ関根がカットインからシュート。

f:id:johnny2230:20201005191526p:plain

名古屋の攻撃の変化

f:id:johnny2230:20201005192233p:plain

名古屋の守備での変化
後半の事象

給水タイムまで

48:40~名古屋のスローインから。右サイドのコーナーフラッグまで前進し、マテウスが利き足の左で金崎にクロス。デンが辛うじてクリア。

52:20~浦和のビルドアップから。興梠が2トップの脇まで下りてきて入れ替わっていた長澤→興梠→健勇と斜めのパスと落としで名古屋のラインを越えていく。

53:20~名古屋の攻撃。左サイドの大外で吉田がボールを持ちハーフレーンに相馬、前田が立つ。さらに周辺に稲垣、マテウスが寄ってきて数的優位を取りながら攻めていく。この流れから金崎の得点となる。

58分関根→柏木、健勇→レオナルド

60:50~浦和のスローインから。柏木が受け興梠にはたく、その後柏木は右ハーフスペースへとフリーラン。

61:25~浦和の攻撃。右の大外でボールを受けた橋岡がMFラインの前でフリーになっている柏木にパス、柏木からレオナルド→橋岡へとつながり橋岡がシュート。

63分長澤→伊藤

64:20~柏木と興梠が短いパス交換を何度か行いマルティノスへ縦パス。ジェソクが突っつきロスト。宇賀神が柏木らに近づき大外に張らなかったためジェソクがマルティノスへそのまま付くことが出来た。

65:40~浦和のビルドアップから。柏木が稲垣を引き連れボールを持っている宇賀神に近づく、それによりDFMFライン間が間延びし宇賀神からライン間の興梠へと入り大外の橋岡まで展開。橋岡がクロスする。

66:30~名古屋のカウンター。マルティノスからボールを奪ったマテウスは稲垣→吉田相馬へとつなぎ橋岡と一対一の状況に。稲垣は金崎に縦に付けることもできたが外側の吉田を選択。

 

f:id:johnny2230:20201006084332g:plain

失点シーン

f:id:johnny2230:20201006142046p:plain

柏木投入の変化

試合終了まで

69分前田→シャビエル

70:30~槙野が2回前方のスペースにドライブする。2回ともシャビエルにファウルでつぶされる。マルティノスが悶絶し、レオナルドは呆れた顔をする。

71:50~デンからレオナルドに楔が入りマルティノス→伊藤とつながりDFラインと対峙する状況に

73:00~浦和のビルドアップから。宇賀神から伊藤に渡るが、伊藤は稲垣を引き連れさらに後方の確認をしていなかったためジェソクが狙いに来る。結果ジェソクに詰められロスト。

73:30~デンから2トップの裏に位置していた柏木に。柏木はゴール方向を向き裏を狙った橋岡へのパス。

74:55~浦和のビルドアップから。槙野が前方に広大なスペースがある中マークされている宇賀神へのパス。折り返された後も広大なスペースがあったがエヴェルトンへ横パス。

81分宇賀神、マルティノス→山中、武藤

83:25~浦和のプレッシング。米本と稲垣をMF以降の6人で囲みパスミスを誘発柏木→レオナルド→武藤へつながりシュート。CKに。

84分山中のCKのこぼれをシャビエルが運びデンがファウルで止める。DOGSOにより退場の判定。

87:45~西川のロングフィードのこぼれを柏木が回収→興梠→レオナルドとつなぎペナルティアーク付近で前を向くがパスコース、シュートコースが無くサイドに流れる。その後伊藤→柏木→興梠と狭いところを通しエリア付近に近づくが、突っつかれロストこぼれを槙野がミドルシュート

f:id:johnny2230:20201006172455p:plain

終盤の浦和の攻撃
浦和の狙いと実行に関しての推察

〇ビルドアップの場面

この試合多く見受けられたのは、ビルドアップの結果として名古屋の2トップの間、裏、脇でゴール方向を向いて選手がボールを受けられたことである。これにより名古屋のMF、DFは危険な中央を締める、ラインを下げるという行動につながった。そのため大外で待機していた選手、マルティノス、関根、橋岡などが一対一の状況でボールを持つことが多くなった。大外の選手がゴールに向いた状態で一対一の状況を作り出すのがこの試合のビルドアップの狙いといえる。

この狙いによって右サイドではマルティノスが対面の吉田に対し何度も突破する場面が見受けられ、そこからクロスが上がり前半の興梠の決定機につながった。逆サイドの関根はオジェソクに何度もつかまり突破するシーンは見られず、前半終盤のカットインからのシュートくらいであった。

また2トップの裏で受けた長澤から興梠へのラインブレイク、あるいはエヴェルトンのオリエンタードからのMFラインの突破、柏木からレオナルド、橋岡にDFラインの際へのパスも見られた。

課題としては、シュートを打つ人間に対しては、チームとして空間と時間を創出する場面はほとんど見受けられなかった。大槻さんが最後の部分の改善をしなければいけないとコメントしているのは、シュートを打つ場面のデザインが未着手だからだといえる。

〇奪取と守備について

この試合の序盤には浦和の選手がボールを失ったのち、素早く奪取に向かう場面がみられた。しかし稲垣にターンされて交わされる、素早く金崎に入れてサイドへ展開されるなどによって効果的には(=奪ってカウンターの効果のある位置で)奪うことはできなかった。この奪取の失敗が何度か続いた後は、ボールロスト後はゾーンによる守備ブロックの形成を優先するようになった。

名古屋の攻撃がロストした際にリスクのある中央付近を避け大外で相馬やマテウスの一対一を作るのに注力していた影響もあるが、ブロック形成後中央を経由させることはほとんどなく、サイドへ誘導しSB-SHが連携して空間圧縮で何度もボールを回収することに成功していた。

一方で課題としていえるのは、名古屋がPA付近に近づくにつれ、空間と人への意識が選手によって曖昧になっていくことといえる。前半の前田のチャンス、金崎のミドルシュート、失点シーンは選手によって空間と人への優先順位が違うようで連動して守備が行えているとはいえなかった。特に失点シーンではボールウォッチャーになり周囲の情報の更新を怠って狭い空間で前田に引き寄せられ、金崎と金崎が利用した空間に対して守備が行えなかった。

〇カウンターについて

この試合では、カウンターといえるのはマルティノスのPK未遂の場面とマルティノスの逆サイドまでのプレッシングからの場面くらいであった。前述したように名古屋の攻撃自体がロストしてカウンターのリスクのある中央からではなかったこと、前線からのプレスで効果的な位置での奪取ができなかったことがほとんどカウンターが行えなかった要因といえる。

未だにセットオフェンスでシュートをどう打つのかというデザインがされてない以上、効果的な位置での奪取からカウンターによる攻撃が現状の浦和の基本的な得点方法といえる。なのでプレッシングの失敗が目立ち意図的な奪取からカウンターの回数が少なかったのは課題であり、この試合で得点が取れなかった要因ともいえる。

〇交代策について

この試合では59分に健勇、関根→柏木、レオ、63分に長澤→伊藤、81分にマルティノス、宇賀神→武藤、山中へと交代していった。

まず、伊藤の交代までで大きく変化したのは後方でのビルドアップにマーカーを引き連れたまま柏木や伊藤が下りてくることである。またボールをさばいた後、前方のスペースへ入り込んでいくフリーランニングである。フリーランニングにはほとんどの場面でマークする選手も付いていた。その結果として柏木からボールを渡された選手の前方のスペースは走ってくる柏木と共に狭まっていくことになった。もちろん柏木や伊藤は狭いエリアでもボールを扱えるので問題はあまりないといえるかもしれない。

交代するまでは大外に空間と時間を作ることを目的としていたビルドアップが、交代してからは中央で空間と時間を見つけ利用するビルドアップに変化していったといえる。当然得点をするならばどちらの方法論でも問題はない。しかし、結局のところどちらの方法でもシュートを打つ選手に時間と空間が現れることはなかった。

レオナルドに関しては積極的にDF-MFライン間で楔を要求して受け、落としたり前方を向くことが出来ていた。しかしレオナルドがシュートを打てる位置でボールを受けた場面はほとんどなかった。

武藤に関してはより中央での空間と時間を見つけるために投入されたように感じる。ペナルティアーク付近でシュートを打てそうだった場面もあった。

〇 選手個人についての感想

マルティノス

この試合が今シーズン初先発だった。これまでの試合では交代出場なのに先発の選手よりも試合途中で疲れ、守備へ走らなくなるなどのネガティブな印象だった。しかしこの試合では、ネイマール並みの痛がり方をするのは置いておいて素早く守備ブロックの形成に尽力する姿、ゴール方向を向きながら時間と空間を創出するドリブル、吉田を圧倒する突破など非常に良いプレーをしていた。さらにプレーだけではなく、試合後にサポーターへの挨拶をする際にも丁寧にサポーターの顔を見ながら拍手したり、深々と礼をしたりしていた。この試合では『浦和の責任』を一番表現していたと思う。継続的にパフォーマンスを見せてほしい。

橋岡

この試合では名古屋の多くの攻撃が相馬と橋岡の一対一に偏っていたので、多くの守備対応が見られた。気になったのがドリブルに対して構える際に、腰を下げすぎた状態でいることが多い点である。スプリントに自信があるためなのかわからないが、腰を下げることで方向転換に時間がかかるので大事な局面で後手を踏むことになる。失点シーンでは腰を下げすぎていたため対応に時間がかかってしまった。攻撃の場面ではマルティノスと効果的にレーンを入れ替わってうまく前進し、ライン間にボールを流し込むなどいい場面はあった。クロスがどんどんうまくなっているので今後は対面を剥がすことが増えてほしい。

あとがき

結果は0-1の負けとなった。要因としては守備の最終局面の連動性がまだないことによる失点、プレッシングの質の低さ、セットオフェンスでのシュートまでの仕組みの未整備による得点の偶発性がいえる。

中身に関しては着実に意図的にできることは増えていると感じるので、サポーターとフロントが大槻さんに対して時間をどのくらい与えたいのかという点が今後重要になる。個人的にはこの試合の内容を発展させていけばミシャが浦和でやりたかったことをよりクラブ全体で再現性をもって行えるようになるのではと思う。

次の試合まで一週間あるので鳥栖戦ではプレッシングの質の改善を期待したい。

 

 

読者の方、お読みいただきありがとうございました。

ご意見があれば、教えていただけると幸いです。

守備と攻撃、概念

守備とは何か

得点をさせないことである。

具体的には、シュートを防ぐこと→シュートの精度を落とすこと→シュートを打たせないこと→シュートが打てる位置まで運ばせないこと→相手にボールを保持させないことである。つまりゴールを脅かす危険性のある選択肢を制限していくことといえる。

守備のプロセス

制限→誘導→圧縮→精度の低下→ボールの回収あるいは次の相手選手へ
制限について
ボール保持者の選択肢を危険性に基づいて制限して、秩序をもって対応しやすくする。
制限をする要素は技術(パス、運び、シュート、コントロール)方向(縦、横)リソース(認知材料、可能域)としての空間、時間である。
誘導について
ボール回収の期待値が最も高い所への方向づけ。
圧縮について
保持者のリソースを少なくしプレーの精度を低める。

基本的な守備戦術概念

守備の戦術概念は大きく二つ存在する。マンマークとゾーンである。

マンマーク
マンマークは保持チームの選手に非保持チームの選手が1vs1で対応し、保持者への制限を行う守備である。危険性を人であるとする戦術概念である。

対応する選手が決定されているため、周囲の情報を見るといった認知のリソースを消費しにくい。
ボール保持者との関係性が希薄な選手の移動でも、対応者は移動しなければならず、移動距離は対応する選手に規定される。守備者の位置は対応している選手に準じる位置となる。

 

f:id:johnny2230:20200928135922g:plain

②ゾーンディフェンス
ゾーンディフェンスとは組織が連動して保持者への制限を行う守備である。危険性を人だけではなく、空間にもあるとする戦術概念である。


ゾーンディフェンスにおいて守備者は、ボール保持者の選択肢の蓋然性と危険性において位置を決めて移動する。つまり組織として守備のプロセスを行うということ。

周辺の情報について逐次更新しないといけないため、認知技術が必要となる。またチームが連動して動かないといけないため、チーム戦術の尊重が必要。

マンマークと比べ主体的と言えるのがゾーンディフェンスの特徴である。

f:id:johnny2230:20200928140835g:plain

その他の守備戦術概念

<門、チェーン>

守備者が二人以上で制限をする仮想的な線としての連携

f:id:johnny2230:20200928142228p:plain

<スライド>
ボール保持者のプレーの蓋然性と危険性に合わせて次のプレーする空間を狭めて(埋めて)いく移動。
<ボール周辺の雲行き>
制限がかかっている状態でのボール保持者の選択肢に基づいた次のプレーの蓋然性。
<プレッシング>
積極的なゾーンディフェンス。非保持側が攻勢に保持チームのプレーを制限していくこと。基本的なゾーンディフェンスと比べ、素早さ(物理的、意思決定プロセス)、行動間の連続性(切り替え、運動量)が求められる。
<段差、ディアゴナーレ>
二人以上で形成する方向づけ。斜めに位置することで一人目の守備の後のカバーが可能になる。

f:id:johnny2230:20200928150005p:plain

<リトリート>

相手の攻撃にかける時間を増やす概念

攻撃とは何か

得点をすることである。守備の逆でゴールの可能性のある選択肢を増やすことといえる。

攻撃の要素

奪取、前進、時間と空間の創出、シュート

奪取とは、相手チームのコントロール下からボールを移動させ、自チームのコントロール下に置くこと

前進とは、シュートが可能な位置までボールを移動させること

時間と空間の創出とは、シュートの可能性に現実性を与えること

代表的な攻撃戦術概念

<カウンター、ファストブレイク>

ボールを奪取した際に、相手が空けていた空間と非保持秩序が高くなる(様々な制限がかかる)までの時間を利用し攻撃する戦術概念。

<セットオフェンス、ポゼッション>

相手の非保持秩序が高まった後に、相手の秩序を利用、無秩序化し空間、時間を創出し攻撃する戦術概念。

<数的優位、オーバーロード

ボール保持者の周辺に守備者よりも多く味方を配置し、ボール保持者のパスによる選択肢を増やし、守備者の秩序に負荷をかける戦術概念。結果として保持者周辺の空間は狭まる。

<ロングボール、キックアンドラッシュ>

ボールをできる限り少ないパスでペナルティエリア周辺に前進させる戦術概念。空間を創出することよりも時間を節約することを重視する。

 

その他の戦術概念については思いつき次第追加していく。

ポジショナルプレーについては別途記事を設ける。

 

読者の方お読みいただきありがとうございました。

何かご意見がありましたら、教えていただけると幸いです。

選手の技術について

概念

技術とは、ある目的を実現するために現実世界に現れる方法である。

目的には、攻撃(得点をする)、守備(得点をさせない)という属性がある。

技術の要素としては、空間概念、時間概念が存在する。

選手の意思決定プロセスにおいては、認知できる情報を増やす技術、意思決定における個人原則、プレーの精度として関係する。

※前にサッカーの局面を保持、移行期、非保持に分類したが、保持しているとは、ボールに次に触れる蓋然性が高い状態であるといえる。選手が保持している場合をコントロール下と表現し、ボールホルダー(保持者)と表現する。

<認知に関係する技術>

周囲の情報を見る、視覚的に表現する技術。周囲の情報を音声として発する、受け取る技術。周囲の情報を触覚によって知覚する技術。

<個人原則に関係する技術>

〇ボールを受ける技術、自分に向かってくるボールをコントロール下にすること。トラップ、コントロールと呼ばれる。方向性、距離という要素が存在する。良いコントロールとは、ボールが保持者の体が最も近い状態=懐にある状態といえる。

〇ボールを移動させる技術

味方へボールを移動させる技術。パスと呼ばれる。人と空間という志向性、距離、速度、方向という要素がある。

ゴールへボールを移動させる技術。シュートと呼ばれる。速度、方向という要素がある。

ボールを相手のコントロール下から移動させる技術。タックルと呼ばれる。

ボールとともに移動する技術。ドリブルと呼ばれる。速度、距離、頻度、方向が関連する。

〇移動する技術。重心の移動、身体の移動の種類がある。速度、距離、方向が関連する。

 

技術について具体的なものは、目的について考えてから考える。

 

読者の方お読みいただきありがとうございました。

何かご意見がありましたら、教えていただけると幸いです。

戦術とは

選手を助けるものとして

試合中の状況は自然状態である。そのため、選手は状況に対する概念がない場合、何を行うべきなのかはゴールをする、ゴールをさせないといったルール、あるいは自分の好きな選択に従うことになる。

戦術とは、状況に対する認識の枠組みを与え、選択肢を整理することといえる。即ち無秩序で非効率な状態を、秩序的で合理的な状態にすることである。保持時には保持時の秩序が存在し、非保持時には非保持時の秩序が存在する。また移行期は基本的には無秩序である。

チーム戦術とは、チーム内の選手同士が状況に対し同じ認識をして、同じ選択肢を持つということである。また設計を行う監督においては、空間、時間、人という資源の管理として考えられる。

もちろん戦術は概念的なものなので、意思決定プロセスを助けるに過ぎない。実行するのは選手で、選手が実行できない戦術は机上の空論である。

試合において、保持側の戦術と非保持側の戦術が相互に影響を及ぼす。相手の秩序を利用する、相手の秩序を破壊し無秩序状態に陥らせるということが起こる。具体的には、非保持時に大外を捨てるチームと対戦するならば、大外で精度の高いクロスを上げられる選手を配置しクロスを多く入れるなど。

秩序を構築するのは効率的で効率性は逓増するが、効率性はある程度のところで逓減し始める。過秩序は非効率に陥る。行動が読めるなら対策されるようになるということ。当然分かっていても止められない場合もある。

また秩序を構築することは、思考のリソースを節約し効率性を増すことであるが、秩序を維持するには物理的なリソースが必要である。秩序はそのままでは無秩序状態に移行する。つまり秩序の構築として戦術をとらえるならば時間性について考える必要がある。

 

時間性ついては後日記事にします。

 

読者の方お読みいただきありがとうございました。

何かご意見があれば教えていただけると幸いです。

選手の意思決定について

意思決定プロセス

試合では、選手がプレーを行う。つまり、試合に直接的に関与できるのは、選手のみである。スタッフ、サポーターは間接的な関与のみである。

選手がプレーするとは、ピッチ上で認知し、判断し、意思決定を行い、行動をすることである。

認知とは、選手が身体的器官(視覚、聴覚、触覚など)を使いピッチ上の情報を得ることである。

判断とは、選手が持っている概念を認知された情報に当てはめ、状況を解釈することである。

意思決定とは、判断をした状況に合わせ、選手の持っている選択肢(個人原則)の中から一つ選択することである。

行動とは選択したものを実際に現実世界で表現すること。表現する精度に関しては選手の能力(身体的、技術的)に大きく影響される。

意思決定プロセスは意識的なものと無意識的ものが存在し、無意識的な回路のほうが高速である。

試合の中で意思決定すること

試合においては意思決定を行う時間は限定される。そのため、限定された状況で素早く、よりよい意思決定を行う必要がある。そのためには選手の情報、概念、選択肢のいずれにも思考や身体の優先順位(バイアス)を利用すること、条件反射的に単一の行動をすることで高速化する。

思考のバイアスとは、価値の低いものと高いものを設定することである。価値の高低については選手の経験的(環境的)なもの、チームとして設定しているもの(戦術)、ゲームのルールが影響を与える。

身体的なバイアスとは、情動的に反応するということ。情動的に反応することとは、特定の状況に対して、瞬時に選択肢が浮かんでくること。具体的には、物を投げられた時には、勝手に避けるか受け取るか選択をしてしまうこと。俗に本能的と呼ばれる行動がそうである。

情動的にネガティブな状態(緊張状態)であると選択肢は限定され身体は硬直する、ポジティブな状態(リラックス状態)だと選択肢は増え無駄な力は抜ける。怒られているときには怒られたことしか考えられないし、風呂に入っているといいアイデアが浮かんでくるのである。

無駄な選択をしている時間的余裕がない大事な局面で、緊張感を持てという言葉は情動的に正しいし、情動バイアスの効果的な利用といえる。中西哲生氏が提唱している<フラットな感情でプレーする>とは、情動的なバイアスを可能な限り取り除き過剰な選択肢の制限、緊張による体の強張りを防ぐということだと思う。

条件反射で反応するとは、特定の状況に対して一つの行動を結び付け、状況が発生したら自動で行動が発生するようにすることである。

選手との関わり方について

選手を過度な緊張状態にさらすことは選択肢を狭め、効果的な選択を妨げることになる。サポーターが圧力をかけることも、監督が過剰に怒ることに意味はないのである。ケパやカリウスなどはこの負のスパイラルに陥ってしまってると感じる。現代においてはSNSの発展による、コミュニケーションの簡易化が進み、選手が精神的にリラックスできる環境が少なくなっていると感じる。

また身体接触が避けられないスポーツである以上選手は怪我に悩まされる。情動とは身体情報の無意識的発現なので、怪我による痛み、不快感によっても緊張状態に晒される。

選手はこのような緊張状態になりやすい環境を過ごしており、過度の緊張状態が持続するといたる先は鬱病であり、エンケの悲劇を忘れてはならない。イニエスタバルデスなども鬱を経験している。

選手に対して、クラブという共同体(サポーター、スタッフ、選手)はできる限り、良い環境を整備し選手が過度の緊張状態に陥らないようにするべきだと思う。

練習においては、コーチは選手の認知、判断、意思決定、行動の精度や種類を増やし、より高速で可能になるようにするのを助けるのが仕事になる。

 

読者の方お読みいただきありがとうございました。

何かご意見があれば教えていただけると幸いです。

ルール、構造について

サッカーの構成要素

ゲームの構成要素は空間、時間、ルール、人である。

試合においてはピッチ、試合時間、ルール、選手(プレーを行う人)、審判(ルールの適用をする人)である。

空間について

<ピッチ>

プレー可能な空間。基本的に68m×105mで区切られている。

<ゴール>

7.32m×2.44mで区切られた空間。この空間を通過したボールを得点として数える。

<ゴールエリア>

ゴールの枠に5.5mづつ左右に追加し、縦方向に5.5m追加した空間。

ペナルティエリア

ゴールの枠に16.5mづつ左右に追加し、縦方向に16.5m追加した空間。この空間が自陣のGKは手を使ってプレーできる。

<ペナルティスポット>

PKを蹴る際に、ボールを置く場所。PK時にはキッカーと相手GK以外はペナルティスポットから9.15mの半径の円とペナルティエリアから離れなければいけない。円のうち、ペナルティエリア外の部分をペナルティアークという。

ゴールライン

ピッチを区切る線のうち、68m(短いほう)。自陣においてゴールラインをボールが超えた時、最後に触れたのが味方の場合はCK、相手の場合はGKに、ゴールの枠内であれば得点として認めキックオフとして次のプレーに移行する。

<コーナーエリア>

コーナーキックの際にボールを置くことが出来る四分円。r=1m。CKの際には、相手選手は四分円の中心であるコーナーフラッグから9.15m離れなければいけない。

タッチライン

ピッチを区切る線のうち、105m(長いほう)。タッチラインを超えた際に、最後に触れた選手の相手がスローインを行う。

<センターマーク>

ピッチ上の中心。この地点からキックオフを行う。キックオフ時にはセンターマークから9.15m離れなければならず、円状の空間をセンターサークルという。

 

f:id:johnny2230:20200927050135p:plain

ルールと空間あれこれ


静的な空間概念

ピッチを三分割する概念(スペインでは進行方向手前からスペース1,2,3)
f:id:johnny2230:20200925005514p:plain

ピッチを五分割する概念

f:id:johnny2230:20200925005455p:plain

動的な空間概念

オフサイド

相手に、試合に関与が可能な位置と不可能な位置を定めるルール。

f:id:johnny2230:20200925013100g:plain

<ライン間>

非保持チームのFWライン、MFライン、DFラインの間の空間。

<チャンネル>

非保持チームDFラインにおいて、サイドの選手とその隣の選手の間の空間。

<ハーフスペース>

ハーフレーン上で、DF-MFライン間のスペース。

f:id:johnny2230:20200925005437p:plain

時間について

<試合時間>

前半45分+追加時間+15分休憩+後半45分+追加時間(+延長前後半15分ずつ、+PK戦)

前後半の開始時では交互に、ボールの保持権がわたる。

<インプレー>

オープンな状況においてプレーしている時間。

<アウトオブプレー>

セットプレー、もしくは審判が笛を吹き試合を止めている時間。

<ゲーム状態>

①セットプレー=ボール保持者が制限を受けない静的状態。

GK、FK(直接、間接)、CK、PK、スローイン、キックオフ

②オープンプレー=常にボール保持者が変わる動的状態

保持状態⇔移行期(両チームの非保持状態)⇔非保持状態

ルールについて

<勝敗基準>

時間内に相手より多く得点(ゴールより奥にボールを移動させる)をすること。

<ピッチ内での選手の行動>

ボールを受ける、ボールを移動させる、ボールとともに移動する、移動する、選手同士でコミュニケーションを取る。

<ピッチ内での審判の行動>

試合の時間を開始、停止、終了させる。ルールを適用する。選手とコミュニケーションを取る。

 

 

自分の中の知識が変化し次第、追記もしくは記事の追加を行う。

 

読んでくださった方。ありがとうございました。

何か思うところがありましたら、教えていただけると幸いです。

勝つことと勝ち続けること

ゲームとして

人がサッカーというゲームに対して関わる際に、何を求めどういう態度でいるかというのはとても大事なことだと思います。

サッカーには、サッカーというゲーム自体とサッカーというゲームをすることという側面あると思います。

今回はゲーム自体に対する態度を考えます。サッカーというゲームは勝ちと負けを発生させる構造になっている以上、第一に勝敗に対する態度があります。

勝ちというものに対して、勝つことを求めるのか、勝ち続けることを求めるのかという二つの態度があります。この二つは似ているようで大きく違います。

勝敗というものには、強い(効率的)か弱いか(非効率)という価値しか存在しません。

また勝ちは偶然性にも左右されるものです。試合が始まってすぐPK+レッドカードが出る場合もありますし、チームの中心が負傷により退場せざるを得なくなる、ピッチに入ったビーチボールに当たってゴールになるなんてことも。

勝つこと

勝つことというのは、シンプルに試合に勝つこと、タイトルを獲得することです。人間ですから、勝ちか負けるかどちらが良いとなったら当然勝ちたいと思うはずです。

しかし、勝利に拘ること(勝ちを絶対視すること)に陥ると、負けた際に大きな困難に陥ります。なぜなら負けたら価値が無いという志向だからです。そして人間は価値が無いと思うことに耐えられないので、勝敗に関係をするもの以外の価値(面白さ、美しさ、正直さ、愚直さなど)を欲します。勝てない状況が続くと、こんなの忖度だ!、アンチフットボールだ!、FACT!という勝者へのルサンチマン的言動に到達します。

このルサンチマン的言動にまで陥ると勝敗に関係のないことばかりに気を取られ、強いか弱いかという勝敗に関わる価値判断に注力できなくなります。

さらに勝利を絶対視することを続けると、決戦主義に至ります。勝てば全てが不可逆的に変わるという思想です。この考えでは資源の中で持続可能なものでも消費してしまいます。決戦主義では資源に余裕がない限り、長期的に持続できません。そして資源が限られているときに決戦主義に陥ると、負けてしまった際に致命的な事態に陥ります。今年昇格をするため、CL権を確保するため、優勝するために維持できない大型補強を行い失敗し沈んでいったクラブは数え切れません。

勝ち続けること

勝ち続けることとは、勝ちに値する(強い行動をとれる)ように学習(上達)することです。

勝利に値すること=サッカーという構造の学習そのものに価値を置くので、勝敗というものは学習の達成度の通知に過ぎないことになります。これにより負けという出来事に左右されずに常にゲームの学習に全力を注げます。左右されないといっても当然負けたら眠れなくなるほど悔しいと思いますが、何ができて何ができなかったから負けたと思うことができ、勝利へと邁進していくことが出来るということです。

つまり勝利に関わる<やるべきことをやる>ということに注力できるということです。このことについてニーチェは<力への意思>と表現し、プロゲーマーの梅原大吾は<勝ち続ける意志力>と表現しました。

勝ちに値することは、サッカーに最善がないために試行錯誤でしか学習できません。なので一見意味のないような基礎研究を行う必要があります。時間がかかります。そして持っている持続可能な資源の範囲でしか行えません。やるべきことはできることからしかできないということです。クロップは疑う者から信じる者へ変わろうと発言し、勝ち続けるための時間(=サポーターからの信用)という資源を確保しようとしました。

学習の進みは外部からは教養がないと評価できません。評価者もサッカーについて学習していくしかありません。

勝つことと勝ち続けることの関係

だれでも最初は勝ちに値することについて学習することからはじめますが、問題は勝った時、タイトルを獲得した時です。勝利の味を知ってしまうと学習の価値が薄れてしまいます。クラブの人間が学習に価値を置いていたとしても、サポーターの多数が勝利のみを求めるようになるとクラブはサポーターには逆らえません、資源の消費が始まります。そして学習は時間さえあればだれでも可能です。学習した優位性はすぐ追いつかれます。

つまり勝つことを求め始めると、学習の必要性を確認するまで勝てなくなっていくというパラドックスに陥るということです。

1シーズンの結果でクラブは無くなりません(基本的には)、クラブはずっと存在し続けます(地域の公共物であるなら)。私は勝つことを求めるよりも勝ち続けることを求め学習していくこと、勝ち続けるために行動している人間を信用するのが良いのではと思います。

 

 読んでいただきありがとうございます。